参議院議員会館へ突入

takeo_takeo2008-09-24

今日は参議院議員会館で行われた、「日本の農業政策の実態」と題した
国会勉強会へ行ってきた。
もちろん参議院議員会館など入ることも初めてだし、
そもそも国会議事堂のそばに来るなど小学校の社会科見学以来でテンションも上がるが、
今回はそんなのん気な会ではない。


講師を務めるのは、雁音農産開発有限会社の小野寺ひかるさん。
この小野寺さんは僕が都内で生き物やビオトープについて一緒に勉強をした同期生であるが、
雁音農産の社長の長男の嫁、自称の肩書は「農家の嫁」として、
日本の農業の未来を毎日真剣に考えているものすごい熱意みなぎる女性である。
小野寺さんとの出会いが僕の近年のひとつのターニングポイントだったと言っても過言ではないだろう。


その前に雁音農産とはどんな組織なのか、僕の言葉で紹介しよう。


宮城県大崎市田尻。この地域の150以上の農家がつくるお米が「雁音米(かりおんまい)」だ。
近くにはラムサール条約登録湿地の1つ、蕪栗沼があり、ここはマガンの最南端の越冬地である。
毎年何万羽というマガンは蕪栗沼をねぐらにしているが、朝になるとえさ場を求めて周辺の田んぼに出かける。
そんなマガンの声がいつまでも聞こえる田んぼで米作りをしよう、
という願いを込めて雁音米と名付けられた。


マガンだけではない、生き物あふれる田んぼでとれるお米は
言葉だけの安全・安心よりもずっと説得力のある安全性を保証してくれる。
農薬を使わず、生態系の力で稲を大事に大事に育てる。
栽培方法も「真の環境保全型農業とは何か」を常に考えながら、正直に田んぼと向き合う。
そんな農家の愛情はしっかりとおいしさにもあらわれていると思う。


そしてその農家の米作りへの思いを消費者にしっかり届け、
また消費者のメッセージを農家に伝える役割を担うのが雁音農産なのである。
契約農家さんの指導から始まり、集荷、そして販売を行っている。
こうした地区単位、集落単位の取り組みは農村環境全体を守ることにもつながっている。


このブログでも何度かとりあげたと思うが、
僕はこの雁音農産に去年から何度も何度も手伝いをさせてもらっている。
種まき、田植え、除草、生き物調査、集荷、米検査…ちゃっかり農家の研修旅行にまで同行させていただいた。
今年も10月から新米の集荷作業を手伝いに行く予定だ。



そうこうしているうちに、何度も何度もたずねていく中で
こうした手伝いというものが僕の中で何のためなのかわからなくなっていたのかも知れない。
もちろん田尻に魅了されていたし、行けば楽しい。
まじめなことで言えば農家の方の苦労を少しでも知りたい、消費者にもできることを考えたい、と思っていたが、
小野寺さんから100のメッセージをもらいながら、僕が家まで持ち帰っているのは10、いや1なんじゃないか。
そのぐらい吸収できていない自分がいる。
そしていつまでも目的意識もなくプラプラ遊びに行くようではいけないとは思っていた。


でも今日小野寺さんは講演会で言ってくれた。
「スズキが歩いた道そのものがトレーサビリティなんだ」と。
僕だけが知っていること、僕だけができたことがあったと気づかされた。
すごく救われた気がする。


恥ずかしい話だが、我が家では今雁音米を食べていない。
父は米をほとんど食べないため、こだわりもないし、
自分に説き伏せるだけの力もなかった。
自分で食費を払っているわけでもなく…なんてことは言い訳にはならない。
一番悔しいのは、小野寺家で食べる雁音米のおいしさはわかるのに、
我が家で炊いたご飯では違いがわからなかったことだ。。。情けない。


でもあらためてちゃんと説明できなきゃダメなんだ。
自分だけが知っていることを人に伝えられなきゃ意味がないんだ。
小野寺さんと僕のビオトープの先生がそうおっしゃっていたし、まさにそのとおりだ。


その先にもしかしたら都市での農村支援・連携の形というものがあるのかも知れない。
僕が都市と農村を行き来した意味があるのかも知れない。


日本の農業が破滅したとき、みんなが気づくことはたくさんある。
でもやはり僕は今できることを探したい。


雁音に育ててもらった種を、僕は瀬谷の田んぼにまくことができるだろうか。